10.雨上がりの光
森は手帖を美咲に渡し、「これは君たちに任せます」と言って立ち去った。裕太は「おじいちゃんの願いを葉えましょう」と美咲に言った。美咲は出版社に報告し、「月燈」の特別号で手帖の内容を公表することを決定した。
一ヶ月後、「芥川龍之介 未発表作品『武士の夢』発見」というニュースが文學界を驚かせた。手帖の内容は、芥川の原作と岩崎の補完が融合した傑作で、多くの読者から稱賛を受けた。美咲は「迷亭」の再開を提案し、裕太は喜んで同意した。
再開の日は、雨上がりの晴れた日だった。「迷亭」の看闆を新しく塗り直し、店の中には新しい本棚が並んでいる。美咲と裕太は店の戸を開け、待っていた客たちに挨拶をした。
その時、美咲は店の奧の本棚の上に、赤い光が反射しているのを見た。それは、赤い表紙の手帖が太陽の光を受けて輝いているのだ。岩崎老人の想いと、芥川の遺志が、この小さな舊書店で、新しい光を放っていた。雨上がりの空に、美咲は靜かに微笑んだ。

