7.追跡者
美咲は鈴木の聲に驚き、振り返った。路地裏の入口に、黒っぽいジャケットを着た男が立っていた。男は顔の大部分を帽子で隠しているが、美咲の方を見つめているのが分かった。「誰ですか?」と聲をかけると、男はゆっくりと近づいてきた。
「赤い手帖を返せ」男の聲は低く、威圧的だった。美咲はすぐに後ろに退き、鈴木に「救え!」と叫んだ。電話の向こうからは「今行く!」という聲がした。男が手を伸ばす直前、美咲は路地裏の橫の小道に逃げ込んだ。
小道は狹く、曲がりくねっていた。美咲は息を弾ませて走り続け、やがて駅前の人混みに出た。男はその後を追ってきたが、人の中に紛れてしまい、姿を消した。少し後、鈴木がタクシーから降りてきた。「大丈夫ですか?」「誰だったのかな?」美咲は震えながら鈴木の肩にもたれかかった。
鈴木は「暗号を解いたんです。『3-5 ハ』は『第三の本棚、五段目のハ行の本』って意味で、その本の中に手帖が隠されていたんです。でも、この手帖を知っている人が他にもいるみたいです」その時、美咲のポケットの中の手帖が、重たく感じられた。

