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5.芥川の謎

舊書店の謎の手稿 舊書店 470 2025-12-08 15:18

  芥川龍之介が大正十年(1921年)に書いた未発表作品——その可能性を考えると、美咲の手が震えた。手帖の内容を読むと、武士の道徳と人情が対立する短編小説の構成図だった。登場人物の設定や筋書きが詳細に記されており、芥川特有の緊張感が伝わってくる。

  だが疑問もあった。芥川は大正十五年(1927年)に自殺しており、その後も未発表作品が発見されることは稀だ。また、手帖の最後のページには「昭和五十八年 追記」という文字があり、岩崎老人の筆跡に似ていた。

  美咲は文學研究室の教授である大學時代の恩師、山田慶介に手帖を持って行った。山田教授は芥川研究の権威で、手帖を見るとすぐに「この筆緻は、芥川の若年時代のスタイルに酷似しています」と言った。「だが、この『誠』という漢字の書き方は、芥川の常用するものと少し違います。もし本物なら、文學界に衝撃を與える発見です」

  教授の言葉を聞いて、美咲は再び「迷亭」の手稿を読み返した。執筆者は「赤い手帖を見つけた」と書いているが、それが芥川の真筆なのか、それとも誰かが模倣したものなのか——謎は深まるばかりだ。

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